
主な担当は教育普及事業、今年は初めて学芸員実習も担当しました。熱心な実習生との出会いにも恵まれてあっという間の5日間が過ぎ、最後に評価をする段階で「うーん、みんな優秀だ。私が担当でよかったのだろうか?」と妙に悩んでしまったことでした。
さて、そんな私の職場の図書室には『最新図書館用語大辞典』があります。日本史の専門書や復刻版の新聞などの中で少々異色の存在ですが、館内唯一の司書でもある私がいちばん活用しています。
図書館で仕事しているときには常識だったことも博物館では説明の必要があるからで、とても重宝しています。でも、私自身も知らない言葉がたくさんあります。
「泣きわかれ」という言葉が載っているのにはびっくりしました。風情があるというかなんというか… 印象が強くて、一度で覚えてしまいました。
それにしても。
言葉の意味を定義することは大事だと、本を開くたびに思います。
ひとつひとつの言葉が生まれ、定着するまでの長い道のりも想像します。
そういう意味で、私にとって印象的なのは「バリアフリー」という言葉です。
まだ社会にバリアフリーという概念が定着していなかった頃ですが、参加していた聴覚障がい者の研修会では「完全参加と平等」という言葉をよく耳にし、手話表現でも「完全」「参加」「平等」という単語を使っていました。
固い言葉だなー、と思っていたので「バリアフリー」という言葉を知ったときは新鮮でした。最初は指文字で表現されていたその言葉が、平易な表現の手話になったときの驚きはよく覚えています。
驚いている私に、ある友人は平然と「いつかバリアフリーという言葉は使われなくなるよ。ユニバーサルの時代になるよ」と言いました。ユニバーサルって何?と、またまた驚いた私。10年以上前のことですが、とても印象に残っています。
言葉は生きもの。日々生み出されていくものです。逆に消えてしまいそうに思えるものも、記録が残っていれば再び見直されることもあるのです。
もしも、言葉のレッドデータ辞典が編集されることになったとき、「図書館」や「自由」という言葉が掲載されないことを願いつつ。
(A.M.)