練馬区では12館目の地区図書館である。小学校と隣接しており、雨の日でも子どもたちは濡れずに図書館へ来ることができる。
また、学校図書館支援員を管内(図書館のサービスエリア内)6校に1人ずつ配置している。
年間の委託料約1億3千万円、館長は元都立中央図書館の協力課長(全公図事務局担当)でお役人である。
2階建て延床面積は920.03平方メートル、蔵書は6万6千点。1階が一般、新聞・雑誌、閉架書庫(約1万冊収容)。2階が子ども室、青少年、集会室などである。
受託会社はTRCで社員は6人くらいである。
◆これからは非公務員型の人事管理システム
慶応大学の高山正也氏は、公務員の人事は一定サイクルのローテーションによって昇進を保障する制度であるため、「長期間の同一業務への従事による熟練」と高度の能力保持は不可能である。
一方、図書館の専門的業務は「反復的業務経験により培われた習熟した熟練能力に依存」しており、「公務員型の人事管理の下では、熟練・習熟した職能の担当者の処遇は難しい」。
したがって、「熟練・習熟した高度な専門能力を保持して、なお高い処遇の得られる道は、公務員型の人事管理からの脱却しかない。すなわち、解決策は非公務員型の人事管理によるならば、可能であるということである。
このためにはこのような高度な専門能力を有する人たちを十分に処遇できる非公務員型の人事管理システムを持った組織が図書館業務を請け負うことが必要となる。」
(高山正也・南学監修『市場化の時代を生き抜く図書館 指定管理者制度による図書館経営とその評価』時事通信社 2007.11 p.12)
◆現場の実態は
東京23区では既に指定管理者制度による図書館が開館しているが、区民は図書館が夜遅くまで良いサービスをやってくれて、直営より廉い経費でやってくれるのなら大変結構である、と誰でもが思わされている。
特に議員や行政の責任者たちは前年よりも予算を数パーセント安くしたので効率の良いサービスができたと得意げに宣伝している。
その陰で、労働者たちは低賃金年収200万円以下で働かされている。
図書館で本当に働きたい若者は、正規職員になれないためTRCや人材派遣などの受託会社に入って低賃金で図書館の仕事をやっている。
そこでは長期の運営計画などは立てられず、選書もサービスもお客様次第で、ひたすら施主である役所(図書館に配属されている正規職員)のご機嫌を損ねないようにお客の暴言や無理難題に黙ってニコニコ応対している。
その仕事のストレスと長時間の肉体労働で心身ともにくたくたになって毎日をこなしている。それでも図書館の仕事をしたいため身を削って働いている。
指定管理者を決めるのは、かたちはプロポーザルだが実態は金額である。
コストをできるだけ下げるため、館長は退職後の経験者又は図書館にいたことがある管理者で、チーフ、サブチーフを主に月20万円以下で雇い、後のスタッフは時給800〜850円(昼間=東京都内)である。
したがって、意欲のある人を含めて長く働けず、スタッフは常に入れ替わっている。
そのためか、ある図書館では窓口委託のスタッフは2、3ヶ月でやめて行くため、新しい人の確保と教育が日常業務に加わるため大変だとチーフ役の社員はこぼしている。
図書館にポリシーを持った人がいつまで働き続けられるのか問題である。
◆現実と乖離した高山・南理論
高山氏は、公務員は「長期間の同一業務への従事による熟練」と高度の能力保持は不可能であるとし、解決策は非公務員型の人事管理によるならば、可能である。
「専門能力を有する人たちを十分に処遇できる非公務員型の人事管理システムを持った組織が図書館業務を請け負うことが必要となる」と言っているが、しかし、その処遇を含めた実態は全く逆である。
指定管理者制度の図書館運営は働いている職員にスキルをつけることができないし、長期的な展望をもった図書館政策が策定されない(役所が一方的につくることはできても現場との一体性は認められない)。
結果的には、住民の学習権を守るのはおろか図書館が、彼らが批判していた「無料貸本屋」に限りなく近づいていくのである。
(東京支部 大澤正雄)
瀬戸内海離島の「図書館からのまちづくり」を考えています。
勉強のため、時々、見させてもらいます。ありがとうございました。
http://blog.livedoor.jp/hanaichisan/archives/51464217.html