2010年12月27日

図書館道徳経序 その6

厭恥第十三
寵辱若驚、貴大患若身。何謂寵辱若驚。寵為上辱為下。得之若驚、失之若驚。是謂寵辱若驚。何謂大患若身。吾所以有大患者、為吾有身。及吾無身、吾有何患。故貴以身為天下者、即可寄於天下。愛以身為天下者、及可以託於天下。

一般の利用者にとって、図書館の資料評価基準は理解しがたいものであるようだし、図書館が批判を受けた資料や批判を受けた著者の著作を守ろうとするのも理解できないようだ。一般の人びとが理解できない図書館の資料評価基準とは、一般的には高尚な資料やその著者は高い評価を受け、低俗な資料やその著者は低く見られる。

しかし、図書館では、いわゆる通俗本も多く所蔵されていることに驚かれ、また、高尚でそれゆえあまり利用がない資料は、自館で所蔵せず中央館や他の図書館の所蔵に任されている。これが、一般人の理解しようとしない図書館の資料評価基準である。

批判を受けた資料やその著者の著作を守ろうとするのは、批判を受けた資料や著者がどのような理由で批判を受けたのかは、その資料や著作がなければ判断できない。そして、資料や著作を無くしてしまえば、批判を受けたという事実さえうやむやになってしまう。そこで、すべての資料を等しく価値あるものとして遇する者にこそ、図書棺の経営が任されるべきである。また、資料を自分の命のように愛する者にこそ、図書館を託すべきである。

賛玄第十四
視之不見、名曰夷。聴之不聞、名曰希。搏之不得、名曰微。此三者不可致詰。故混而為一。
其上不t、其下不昧。縄縄不可名。復帰於無物。是謂無状之状・無物之象。是為恍惚。
迎之不見其首、随之不見其後。執古之道、以御今之有、以知古始。是謂道紀。

図書館は、単なる建物や書架および蔵書を意味するのではない。建物をいくら見ても図書館を見たことにはならない。それゆえ、図書館は「夷」すなわち影も形もないものであるともいえる。

また、図書館の大多数の利用者は、自分の現に受けているサービスが十分であれば満足している。利用者アンケートを行ったとしても、それだけで図書館の評価を決定することはできない。図書館とは声なき大衆のものである。

さらに、図書館は、蔵書数や貸出数などのデータのみで評価できるものではない。これらのデータのみで、しかも、単年度の経費の増減のみを問題としても、図書館を評価したことにはならない。それゆえ、図書館とは微妙なモノである。

建物や蔵書などの実体としての図書館、利用者一人一人にとっての図書館、経営データ上の図書館の三者を同時に研究することが必要である。図書館の評価には、どの視点が欠けても十分ではない。

図書館および図書館サービスの重要性は、自治体首長や教育委員会にとっては明確に意識されていないが、住民にとっては明白である。欧米の例に見るまでもなく、図書館は「あって当然」のものである。そして、ひとたび良い図書館が設置されるに至っては、それまで図書館の存在を意識していなかった住民も、幸福をもってその存在を享受する。

図書館は人類の文明とともに成長し変化してきているので、その始まりを明確にすることはできないし、その完成形を示すこともできない。図書館の原則を守って、現在の住民に合わせてサービス計画を策定してゆかねばならない。これが、図書館経営の大原則である。

顕徳第十五
古之善為士者、微妙玄通、深不可識。夫唯不可識、故強為之容、與兮若冬渉川、猶兮若畏四隣、儼兮其若客、渙兮若水之将釋、敦兮其若朴、曠兮其若谷、渾兮其若濁。
執能濁以静之徐清、執能安以久動之徐生。
保此道者、不欲盈。夫惟盈不盈。故能蔽復成。

立派な図書館人というものは、一見、何を考えているものかわからないほどぼんやりしているが、あらゆることに深く通じている。強いてその言動をつぶさに見ると、あらゆることがらに対して、冬に川を渉るもののように慎重で、周囲を畏れるもののように謙虚である。

しかし、自らの職に関しては、威儀厳然として、客に行った人のようであり、春の日に氷の溶けようとしているように柔軟であり、ものごとに固執することがない。山から切り出したばかりの新木のように飾り気が無く、谷のようにむなしく、濁り水のようにすべてを受け入れる度量を持っている。

濁り水のように混濁したものを澄まして明らかにできるものは誰であろうか。なれあって膠着しているものを揺り動かして新しいものを生じせしめるものは誰であろうか。真の立派な図書館人のみになし得ることである。

図書館学に生きるものは、単純に満ちることを欲しない。また、単純には満足しない。それゆえ、常に進取の精神をもって、新しい事業に突き進んでゆくのである。

(つづく)

(T.T.)


posted by 発行人 at 14:37 | Comment(0) | リレーエッセイ | 更新情報をチェックする
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