ある日、普段はあまり図書館で見かけない方が、大きな声で
「植物図鑑はないか?」と言いながら入ってこられた。
「植物図鑑はありますが、どうされましたか。」とたずねると、
「こならの木にりんごみたいな実はなるのかな〜」と言われる。
「こならにはどんぐりがなるのではないでしょうか??」と答えながら木の図鑑の場所に案内をする。
案の定こならにはどんぐりの写真が載っている。
「本当にこならの木だったのですか。」とたずねると、確かにこんな葉っぱだったと言う。
「そのりんごみたいな実はどうしたのですか。」と聞くと、なんと食べてみたとおっしゃる。
「大丈夫ですか!どんな味がしましたか?」
「少し甘いにおいがして、割合おいしかったよ。でもちょっと気になって・・・」とのこと。
次に百科事典にあたってみると、最後の方に虫こぶについて書いてあった。
「もしかしたら、これかもしれないですね。でも虫こぶ・・・大丈夫かな・・・」
館内の蔵書を調べると、虫こぶについて書かれている本がみつかり、写真も載っていた。
「こんな感じでしたか?」
「う〜ん、似ているような気がする。」
「中に虫が入っていませんでしたか?」
「そういえば、いたような気も・・・」
「えっ!一緒に食べちゃったんですか?」
「ま、今のところ大丈夫だから。」とその方は、疑問が解決して元気に帰っていかれた。
本当にその後大丈夫だったかはわからないが、今も元気なお顔を見かけるので、大事には至らなかったのだろう。
普段あまり図書館に縁のなさそうな方が、いざというとき図書館を思い出してくれたことがなんだか嬉しく、私も虫こぶという知らなかった世界をひとつ知ることができて、図書館にいる幸せを少しかみしめたレファレンスだった。
(高原の図書館)