少し前には岩波文庫のコルタサルが行方知れずに(未だ出てこず)、そしてまさに今、手にとって愛でたいと思うのに見当たらないのが活版絵葉書画集『ぜんまい屋の葉書』(金田理恵著 筑摩書房 1991)。なぜこの本なのかというと、9月最後の月曜日に活版印刷工場「明晃印刷所」の見学に行ったからなのだ。
大阪福島区のレトロな建物、昭和な雰囲気。工場に足を踏み入れると、そこにはきれいな日焼けにブルガリの香る男性。工場の雰囲気にあっていない気がして戸惑う。しかしこの方こそ、様々な職業遍歴(移動メロンパン屋、占い師、農業、等々)の後、家業である活版印刷業に戻られた二代目高崎氏であった。今関西で一番、いや事によると日本で一番熱い活版印刷屋さんかもしれない。
「RT @meikoprint: 関西活版倶楽部のみんな メーリングを回すで 大手企業とコラボするで!! みんなもっともっとワクワクして加速せんとアカンで 全国に展開するから ポッとしてたら 置いてくからな キッチリとついてこいや」という雄叫びのようなツイートからもその熱さを感じていただけることと思う。ここに出てくる「関西活版倶楽部」とは、高崎氏が関西の活版印刷の若手を集めて立ち上げたもので数々の活版イベントを仕掛ける。
工場では活版印刷機、ドイツ生まれの「ハイデルベルグ」や大阪生まれの「橋本さん」たちの仕事ぶりを見せていただき活版印刷の魅力を再認識した。あの存在感にはなんともいえないものがある。
さて、高崎氏は高校時代まで豊中で過ごされ庄内界隈でブイブイいわせていたとのことで、ローカルな話題でも盛り上がった。「儲かってしゃあない、楽しいわぁ」を口癖のように連発しながら、常に新しいことに突き進む姿勢をぜひとも見習いたいと思った秋の一日であった。
それにしても見つからない本たちは何処に…。そろそろわが家も蔵書点検が必要なのだろうか。
(豊中市立岡町図書館 上杉朋子)